 |
園長 橋本 黎子 |
 |
ご父兄の皆様とはだいぶ世代の違う園長ではありますが、人がよりよく形成され、社会の一員として育っていくための最初の時期を、ご家族の皆様とご一緒に担い、お手伝いができるということは、何よりもうれしいことです。
さて、これまで家族の中で大切に育てられてきたお子さんが幼稚園に入るということは、ご家族にとってもお子さんにとっても大きな節目となります。これまでの家族という小さな空間から出て、幼稚園という集団生活の経験はこれからの人間形成および社会生活を送っていく上での重要な意味を持ちます。
幼児の発達段階からいえば、これまでの自己中心期から抜け出て、集団という中でさまざまな仲間や大人などに出会い、自分以外の第三者が理解できるという段階にはいります。この時期で初めて社会性が身についていくという大切な時期だからです。
人間が形成されていく上で、大脳の働きで言えば、顕在意識にかかわる分野(いわゆる読み書きそろばん、知識や技術、科学や学問など)は学校教育の中で獲得できますが、潜在意識や無意識にかかわる分野ともいえる価値観など「こころの問題」とされる事柄は、その多くが学校に入る前の乳幼児期にその骨組みの基礎が形成されるといわれています。昔から「三つ子の魂百まで」といわれる所以はこのことをさしているのです。
以上のような理由があって、幼稚園での教育は大きな意味を持ってくるのです。
子どもには本来自分自身で育つ力が備わっています。その力を存分につけていくために、私たち大人はいくつかの条件を整えていく必要があります。その条件とは次の4つに整理されます。
- 生理的な満足の保証
いのちを守り、からだの成長を保証するための必要最低条件で、生理的な営なみには食事、排泄、睡眠があります。
- 精神的な安心の保証
ここがしっかりしていれば、将来、反社会的な行動にそれることはないでしょう。
子どもは精神的に安心し、くつろいでいられる時にもっとも順調な発達を遂げることができます。不安やストレスにさらされると伸びるものが抑えられたり、歪められたりすることになります。
- 遊びの保証
子どもたちの生活は食事、睡眠、排泄の生理的な営みを除くと、すべてが遊びといっていいと思います。子どもは遊びを通して、からだや、運動機能、知能、感覚などバランスよく発達していきます
- 「遊び仲間」の保証
子どもは友達が必要な段階に成長すると友達を求めます。その欲求にマッチした 「遊び仲間の保証」環境条件が整っていることがその成長を達成するために役立ちます。
以上の事柄を学校教育の視点からの考え方でいえば、知育・徳育・体育で、あたま、こころ、からだと置き換えることもできます。
現代社会は少子化や豊かさの探求、都市化などの背景のもとで、子ども達を取り巻く環境は危機的状況にあります。したがってこれまで述べてきたことがらを満たしていくには個人の力だけでは到底できるものではありません。子どもをとりまく大人は、親はもとより、子どもの育ちを援助する者や地域社会が力を合わせて知恵を出し合い、よりよいシステムを考えていく時代になってきていると考えています。
わたしたち幼稚園もその一端をにない、子どもたちの生きる力をたくわえる大切な時期をご家族の方々と一緒に考えあっていきたいと思っています。
心豊かな大人になっていく大切な時期を急ぐことなく、遠くない子供達の将来を近視眼的に見ず、大人のまなざしを持って、子どもの成長を楽しみにしていきたいものです
|
 |